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給食棟の、家族のように支えあうスタッフたち ~給食部メンバーの日常 その③

(2007年12月17日)
カンボジア事務所 パン・サン


 「給食部メンバー紹介」の最終回は、毎日給食の調理・配膳などを行う調理員さんたちの1日を紹介します。

 現在働いている調理員さんは9名で、全員女性。そのうち3名は、24年前からNPHでの給食作りに携わるベテランで、多種類のカンボジア料理を調理してきた豊富な経験のほか、栄養の知識を少しもっています。
 調理員さんは、調理・配膳以外にも、調理部門主任のモン・シ・ミン看護師を補佐するための事務作業や、調理機器材の維持管理、調理器具の維持管理、洗浄作業(食器・調理器具の洗浄や清掃)を分担しています。


【調理員さんたちの1日(例】
*シフト制で働いており、1日7人が勤務しています。

5:30
 早番の2名が出勤。朝食の調理を開始

7:00
 残り5名が出勤

7:30~
 朝食を配膳→片付け、昼食の調理

8:00頃~
 食材管理、献立づくりから食材受領までの作業、配膳作業、衛生などについて学ぶ講義に参加
 院内広報のための資料づくりを補助
 (火曜日のみ。2名の調理員が参加)

10:00前
 配膳前のミーティング(不定期。重要なお知らせや、何か問題があるとき)

10:00~

 昼食の配膳→片付け

12:00頃~
 昼休み

13:30~

 夕食の調理と翌朝朝食の準備

15:00~

 夕食の配膳→片付け

17:00
 1日の勤務終了


 新給食システム稼動に際して入職した調理員さんに志望動機を聞いてみました。
 すると「栄養や調理の知識を学びたい」「学んだ知識を、自分の子どもや家族のためにも活用したい」「病気の子どもたちのために何かしたい」…など、意欲的な答えが返ってきました。また、これまで行われてきた栄養・衛生についての講義に参加することで、徐々に食事が身体に与える影響がわかるようになってきたそうです。
  明るく朗らかで、仕事への責任感が強い調理員さんたち。日々の忙しさの中で、実生活に役立つ新しい知識を身につけることが大きなモチベーションになっているようです。


清掃作業 講義に参加

清掃作業も大事な仕事。調理作業の合間をぬって行ないます

 

トダさんとシナさんは、火曜日の講義にも参加。ミン看護師を補助する重要な役割を担っています



11月の患者数

(2007年12月17日)

患者数の推移


給食棟の、家族のように支えあうスタッフたち ~給食部メンバーの日常 その②

(2007年11月22日)
カンボジア事務所 パン・サン


 前回は12名の給食メンバーの要である「運営部門」の主任と副主任の2人をご紹介しましたが、今回は、「運営部門」と「調理部門」をつなぐ重要な役どころでもある、運営部門主任アシスタント兼調理部門主任のモン・シ・ミン看護師の1日を紹介します。


【モン・シ・ミン看護師の1日(例)】

7:30
 給食棟に出勤。
  ・食材を注文する量を決めるため、各病棟の患者数を集計

8:00頃~
 食材の受取及び管理に立ち会う。
  ・重さを量り、注文通りかどうか確認(過不足があれば業者に連絡)
  ・品質をチェック
  ・「使用日」が書かれた札を各食材に貼付し、所定の場所に保管

9:00~

 給食棟の事務・管理業務を行う。
  ・調理場の仕事の様子をチェック(既に昼食の調理が始まっている)
  ・受け取った食材のレシートをコンピュータに入力
  ・調理機器材や厨房内の設備を点検・維持管理
  ・金曜日には、次の週の献立と食材をチェックし、週末の必要分の食材を蔵出し

火曜日…8:30からFIDRの給食支援プロジェクトチーム(五十嵐管理栄養士とパン・サン職員)の現場(厨房)業務に関する講義に参加。調理主任として、食材管理・献立の意味・調理・衛生等についての内容と意味を知っておく必要があるため。

水・木曜日…10:00からFIDRの給食支援プロジェクトチーム(同上)の栄養学講義に参加。


正午頃

  一日の業務終了。

彼は看護師だが、今は通常の看護師業務シフトに組み込まれず、月曜日から金曜日まで、給食棟所属職員としてこの勤務形態をとっている。


 このように、給食棟の事務及び管理業務の責任者として調理員たちの先頭にたち働く、モン・シ・ミンさん。給食を毎日3食、滞りなく患者の子どもたちに届けるために、欠かせない人です。


蔵出し 厨房業務に関する講義

乾物食材(小さな玉葱やにんにく等)と調味料などは食品倉庫に保管してあります。必要分を蔵出しする際には、ミンさんはひとつひとつの食材の出した量を出庫・在庫表に記録します

 

毎週火曜日の厨房業務に関する講義に参加するミンさん(右から2人目)



給食棟の、家族のように支えあうスタッフたち ~給食部メンバーの日常 その①

(2007年11月13日)
カンボジア事務所 パン・サン


 「私たち12名の給食部メンバーは、まるで一つの家族のような気持ちと責任感を持って給食プロジェクトに携わっています。私たちは毎日、病院に入院している患者さんに給食を届けるために一生懸命働いています。FIDRから、技術的・財政的な支援を受けつつ。」
 これは給食部メンバーたちの声です。

 これから数回に分けて、そんな給食部メンバーの日常をご紹介していきます。
 給食部は、給食運営の責任者として栄養学などの指導を行う医師たち(運営部門)と、実際に調理を行う調理員さんたち(調理部門)に分かれています。今回は、「運営部門」にあたる、主任のチー・カムホイ医師と副主任のリム・ソチェト医師の仕事の様子を紹介します。


【カムホイ医師、ソチェト医師の1日(例)】

7:30~10:00頃
  病棟での医師としての業務。
  終了時刻は日によって異なり、11:30や12:00になることも。

10:00~
  給食棟に来て給食部の業務を行う。
   ・ 調理場の仕事の様子をチェック
   ・ 調理員たちに、衛生や基礎的な栄養学の知識を教える



水・木曜日…10:00からFIDRの給食支援プロジェクトチーム(五十嵐管理栄養士とパン・サン職員)の栄養学講義に参加。
火・金曜日…資料やプレゼンテーションの準備方法を習う。
病院の医療スタッフの間で、「給食」や「栄養」に関しての理解が不足しているので、彼らに対して、給食部メンバーが学んでいることや、給食部の業務を伝えるため。


正午頃

  一日の業務終了。

国立小児病院の医師はシフト制で働いており、この日のスケジュールは午前中に勤務するときのもの。このほか、午後~翌朝までの勤務もある。


 給食づくりの仕事の中で、配膳方法や衛生管理についてなど課題が見つかったときには、調理員たちと話し合いをもち、問題解決へと導きます。
 調理員たちの健康も気遣う、「頼れるリーダー」な2人です。


給食部メンバー 給食部の運営部門メンバーとFIDRスタッフ

給食部メンバー。医師2名(上級主任と副主任)、看護師1名(主任アシスタント)、調理員9名の合計12人です

 

左から、リム・ソチェト医師 (副主任)、FIDRパン・サン職員、チー・カムホイ医師 (上級主任)、モン・シ・ミン看護師 (主任アシスタント)



10月の患者数

(2007年11月13日)

患者数の推移


プロジェクトの今:給食の献立ができるまで

(2007年10月18日)
カンボジア事務所 五十嵐(管理栄養士)


 9月に、給食部のメンバーたちが献立作りに挑戦していることをご報告しましたので、今回は、給食の献立ができるまでをご紹介します。

 <日本では・・・>
 日本では、管理栄養士が各種情報をもとに、栄養バランスを考慮して献立を作ります。まず、国が策定している食事摂取基準を活用し、患者の年齢や性別、生活活動強度(寝る・歩く・肉体労働をするなど日常生活における活動の強度を分類したもの)などを把握します。次に、この情報に照らし合わせて、患者に必要な栄養素やエネルギーを検討します。そして、主食・主菜・副菜のバランスと、季節感や地域の特性が活かされている献立をたてます。

<カンボジアでは・・・>
 一方カンボジアには、栄養学の専門家がおらず、栄養に関する基本的なデータもありません。そのような中、ここ国立小児病院(NPH)では、おおよその献立を作ってから栄養バランスなどを考えています。まず、給食部の主任・副主任に、カンボジアで一般的な食事を念頭において朝食・昼食・夕食の献立を考えてもらいます。次に、各献立の中で1日に消費する野菜や肉・魚のバランスを考え、それが子どもの患者に適しているかを検討します。さらに、調理にかかる手間や材料費などを考慮して献立が完成となります。

 NPHでの献立作りでは、まず、これまで単なる「食事供給」であった給食を「栄養的にバランスの取れた1日3食」を「決められた予算内で計画的に提供していく」給食にすることに力点を置いています。NPHでの献立作りは、いわばはじめの一歩を踏み出したばかり。栄養価の計算等については、現在のところ私(日本人の管理栄養士)が行っていますが、将来は、給食部のメンバーがその方法を理解し、必要に応じて現在の献立を改善できるようになることを目標に、日々の業務を通してトレーニングを行っています。


栄養や献立についてミーティング中の給食部のリーダーたちと五十嵐(右奥) 調理員に分かるように、献立を厨房の白板に記入している、給食部主任アシスタントのミンさん

栄養や献立についてミーティング中の給食部のリーダーたちと五十嵐(右奥)

 

調理員に分かるように、献立を厨房の白板に記入している、給食部主任アシスタントのミンさん



最近の献立から:緑豆あんのデザート

(2007年10月9日)
カンボジア事務所 五十嵐(管理栄養士)


 1日3食の給食のうち、昼食と夕食には必ずデザートがつきます。カンボジア人に親しみ深いものといえば、緑豆あんを使った様々なお菓子。カンボジア人にとって緑豆あんは、日本人にとっての小豆あんのようなものです。
写真はある日の昼食です、食器左上の緑色のものは、緑豆を使った生地とあんをバナナの葉に包んだお菓子(左)と、緑豆あんを寒天ゼリー風の生地で包んだお菓子(右)です。

 バナナの葉に包まれたお菓子は、一見するとババロアのようです。食べてみるとなんとも微妙な食感で、口当たりのさっぱりした(水っぽい)ババロアという印象です。生地も中に入っているあんも、ほんのり甘いです。一方の寒天ゼリー風のお菓子は、固めの寒天ゼリー風の生地のなかにあんが入っており、これもまた微妙な食感です。外側のゼリー部分は甘くないので、対照的に、中のあんの甘味がより感じられます。

 患者さんはどんな献立でもよく食べていますが、特に、普段暮らしている村ではあまり食べられない類のデザート(菓子パンや、バナナ以外の果物など)は人気があるようです。


緑豆あんのデザートつきの昼食

この日のデザート以外の献立は、野菜・魚・豚肉入りスパイス風味のスープ、ごはん、魚のから揚げです



9月の患者数

(2007年10月2日)


 国立小児病院で1日3食の給食の提供が始まってから、半年が経ちました。4月から9月末までに給食を配膳した患者さんの数は、延べ37,133人に達しています。デング熱の流行以降は、患者数は減少しています(別表参照)。


患者数の推移


プロジェクトの今 献立作りから配膳までを、自分たちで行えるように…

(2007年9月19日)
カンボジア事務所 五十嵐(管理栄養士)


 給食ができるまでには、<献立作り→栄養価の計算→発注業務→納品物確認→調理→配膳>という一連の流れがあります。給食部メンバーは、給食が開始されて5ヶ月の間に、納品物確認~配膳までは担えるようになりました。残りの過程を含めた全ての作業を自分たちで行っていけるよう、今回、彼らは献立作り~発注業務までの作業にチャレンジすることになりました。

 日々の給食は、1週間単位の「週間献立」に即して作られています。これにより、摂取する栄養のバランスを確保しつつ食事にある程度の変化をもたせ、発注等に関わる作業を簡素化することができるのです。既に3種類(3週分) の週間献立が定着していますが、これらの作成にあたっては、給食部の主任たちが献立を考えたものの、栄養価の計算・発注業務などはFIDRスタッフが行っていました。

 現在は、4番目の週間献立作りの最終調整に入っています。今回の作業を通して、主任以外の給食部メンバー、特に主任アシスタントのミンさんや調理員さんたちが、献立の成り立ちから発注業務までが一連の流れとなっていることを理解し、自分たちで考えながら行えるようにしようとしています。今後は全ての作業を体得し自分たちだけで行えるようにするほか、将来、治療食(個々の患者の容態・病状に即したメニュー)へと展開していくための一歩にもしたいと考えています。


発注した食材が到着 今日の献立(9月13日)

発注した食材が到着。注文どおりかどうかチェックする調理員のトダさん(左)と主任アシスタントのミンさん(右)

 

今日の献立(9月13日)。メニューは、ご飯、魚と青パパイヤの酸っぱいスープ、豚肉炒め(焼肉風)、ジュース



給食配膳者数が、3万人を突破しました!

(2007年9月5日)


 FIDRの支援により、国立小児病院では4月以降、栄養に配慮された給食を1日3食提供する、新しい給食システムがスタートしました。4月から8月末までの患者者数は総計30,619人となり、これまでに3万人以上の患者に給食を配膳してきたことになります。
 4月以降、患者数はデング熱の流行のため急増しましたが、8月に入り減少に転じています(表参照)。給食は患者の子どもやその家族に大変喜ばれており、配膳の時間には、食事を摂る子どもたちの笑顔が溢れています。

給食を食べる子ども

患者数の推移
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