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ベトナムの調理員から、刺激とやる気をもらいました ~ベトナム研修報告2

(2010年8月19日)
             カンボジア事務所 ヴン・シヴレン(プロジェクト・ファシリテーター)
                                 チアン・ヴァンダエット(広報担当)


 7月中旬~下旬にかけて、調理員9人全員を4日間ベトナムに派遣し、第2小児病院とホーチミン栄養センターでの見学や講義による研修を実施しました。

  この研修の最大の目的は、これから国立小児病院(NPH)で、患者の病態に配慮された特別食を調理していくにあたり、作業内容や効果的な調理方法を学ぶことでした。あわせて、病院内の給食部の位置づけや衛生管理について理解を深めることも狙いました。

 調理員が、病院における特別食の内容や調理の流れを実際に見るのは初めてです。また、海外に出る初めての体験ともなりました。彼らは興奮しつつも、とても熱心に学びました。
 「ベトナムの調理員たちが、決まりに従ってよく働く仕事ぶりに、とても感心しました。食材の下準備、調理、清掃など仕事の責任が明確に分けられていて、彼らはそれに則って活き活きと仕事をしていました」と、NPH唯一の男性調理員であるサン・ソリヤさん。

 この研修を通して調理員たちは、NPHで特別食を作っていくことへの自信を深めるとともに、ベトナムの調理員に負けないくらい日常の業務を改善していこうと、仕事への意欲を強めました。
 「医師がどんな食事をオーダーしてきても、私たちは調理してみせます!」とソリヤさんは、今後本格化する特別食提供への挑戦に、やる気いっぱいです。



乳児用のミルク(調乳)について説明を聞くNPH調理員一同。味見をしているのはソリヤ調理員

 

食材の下準備を見学


病院給食システム、「想像」から「具体像」へ ~ベトナム研修報告1

  (2010年7月29日)
 カンボジア事務所 ヴン・シヴレン(プロジェクト・ファシリテーター)
                                 チアン・ヴァンダエット(広報担当)


 5月に完成した病院食事基準に則り、患者一人ひとりに適した病院給食を提供する上で欠かせないのは、医師や看護師が栄養や給食運営について理解を深めること。

 そこで、FIDRは6月下旬、NPHでの給食運営の要となる給食部職員と内科・外科の代表医師の計6人を対象に、ベトナムの病院で視察研修を行いました。一行は、ホーチミンの第2小児病院を訪れ、特別食提供の仕組みの説明を受け、その実際の様子を見学しました。


第2小児病院の新生児科で患者栄養管理について指導を受ける一行

 これまで外国の病院給食システムを見たことがあるのは、昨年、日本で研修を受けた給食部のソチェト医師だけ。他の給食部職員やNPH医師たちは、FIDRが派遣した日本人の専門家から栄養や病院給食の運営について講義を受けてきました。しかしカンボジアに前例が存在しない特別食や病院給食システムは想像するしかなく、理解に難しさを覚えたり、実際の運用のイメージがつかめないでいました。

 今回の視察で、想像の世界が具体的な姿として目の前に広がりました。
 参加者のひとりウン・ウティ医師(低栄養科病棟主任)は「病院給食を提供するには、給食部と医師・看護師の密接な連携が大切なことが良くわかりました。私たち医師や看護師は、給食運営を給食部任せにするのではなく、一致協力してNPHの給食をより良いものにしていきたい」と意気込みを語りました。

 日本の病院との比較ができるソチェト医師にとっても、今回の研修は、実に多くのことを教えてくれるものとなりました。
 「患者にとって食事は薬と同じくらい重要であることを、参加者全員によく分かってもらえました。これからNPHでの特別食導入のために私もいっそう頑張ります」


カンボジア初!病院給食の基準が完成 

(2010年6月25日)
カンボジア事務所 チアン・ヴァンダエット(広報担当)


 5月20日、カンボジア初となる院内食事基準(※)が、国立小児病院(NPH)で完成しました。

 完成までに1年以上を要したこの基準を活用すると、NPHでは、食事を通した患者の治療をより精緻に取り組めるようになります。基準の作成は、昨年研修のために来日した給食部のソチェト医師が日本人管理栄養士の五十嵐とともに進めてきました。

 これまで、NPHでは原則的に、患者の容態や年齢などにかかわらず、同じ献立の給食(一般食)を提供してきました(ただし一部の患者には、豆乳を提供)。

 今回完成した院内食事基準が運用されることで、医師は、個々の患者が必要な栄養を摂れるよう、同基準の中から適切な食事の種類を選び、給食部に指示できるようになります。そのための食事箋も今回新しく作られました。

 こうした方式によるカンボジア初の本格的な治療食のオーダーをスムーズに導入するため、まずは最もシンプルな形で年齢別の配膳量への対応と、お粥などの軟食を、5月24日から低栄養科病棟で開始しました。この試みの結果に応じ必要な改善を図り、段階的に全ての病棟に拡げていく予定です。

 軟食の開始に備え、給食員たちは、新メニューの開発など準備を進めてきました。給食の多様化は、調理員たちの作業量の増加を伴います。それでも長くNPHの調理員を勤めているヴァン・サルーさんは「新しい食事基準で仕事は増えるけど、患者の子どもたちを救うことにつながるのだから幸せだわ!」と期待を表しています。


ソチェト医師(写真右端)が、各病棟の代表の医師たちに、院内食事基準と食事の指示の出し方を説明しました

娘に元気をくれる、おいしい給食

(2010年5月25日)
カンボジア事務所 チアン・ヴァンダエット(広報担当)


 ある日の国立小児病院、午前10時。

 トゥイ・チャン・トーンさんは、病室の前で、入院中の娘・レッキーナのためのお昼ごはんの配膳を待っていました。

 配膳車は時間通りにやってきて、トーンさんは列に並びました。今日のメニューは、ごはん、かぼちゃと豚肉の炒め物、朝顔の葉と茎のすっぱいスープ、デザート。
 「このおかずは、うちの娘の好物なのよ!」トーンさんは、給食を受け取りながら、配膳係の給食員に話しました。

 一人娘のレッキーナは、呼吸器疾患とデング熱を患い、食欲を失ってしまいました。一週間ほどがたち、体重ががっくりと落ちてしまったので、トーンさんはそれまで受診していた地元(コンポンチュナン州)のクリニックを出て、近所の人から噂を聞いていた、この国立小児病院に連れていくことにしました。

 「良い治療と栄養のある食事のお陰で、レッキーナの体重は戻り始めました。この子はこの病院の給食が大好きなのよ」と、レッキーナに給食を食べさせながら、トーンさんは言います。

 入院1日目、固形物が食べられなかったレッキーナには、豆乳が配られました。2日目には容体が好転したため、医師は、体力の回復につながる給食を食べさせるようトーンさんに勧めました。

 「病院で、栄養があるばかりでなく、こんなにおいしい食事が食べられるなんて思ってもみませんでした。いつも時間通りに、おいしい給食を配ってくれるのよ」



 レッキーナの入院は4日目を迎えました。経過が順調であれば、あと数日で退院の予定です。

 「退院して家に帰れるのは嬉しいけど、レッキーナは、きっとこの病院の給食を恋しがるに違いないわ」
 
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