最新ニュース

プロジェクトの今:日本での研修は、たくさんの発見や学びが

(2009年12月11日)
FIDR東京事務所 那須野幸子


 10月20日に来日し、栄養学や病院給食についての研修を受けてきた、国立小児病院(NPH)給食部の副主任・ソチェト医師。研修先の病院では、給食部の位置づけや病院給食の流れ、医師・看護師・薬剤師等、他職種と管理栄養士の協働状況といった全体の枠組みから、大量調理施設における衛生管理、患者さんの疾病や病態にあわせて作成する特別食の献立作りまで、幅広く勉強しました。


患者さん一人ひとりに適したご飯やおかずの量を計量する様子(写真奥)を学ぶソチェト医師

 

栄養相談の時に患者さんから聞き取る内容や注意点について、定型フォームをもとに学ぶ


ソチェト医師
中でも難しかったのが献立作り。病院食事ガイドライン(※1)の作成方法を学び、食品に含まれる各栄養素やエネルギーなどを参照できる「食品成分表」(※2)や「食品交換表」(※3)を使用してメニューを作成したのですが、初めてのことで栄養価の計算が大変でした。カンボジアにはまだ、これらの資料がなく、病院職員の中にも、食事の内容を栄養素ごとに計算する方法を学んだ人がいませんでした。NPHではこれまで、日本人管理栄養士がアジアの食材の栄養価の載った資料を活用して献立を作成していましたが、今後は、私たちカンボジア人が献立づくりをできるようにならなければなりません。

すぐに見習いたいと思っても、カンボジアでは実現が難しいこともあります。例えば、栄養サポートチーム(NST=Nutrition Support Team)といって、医師・看護師・栄養士・薬剤師がチームを組み、それぞれの視点から患者さんの症状を分析し、知恵を出し合って治療にあたる体制。治療のための病院給食と栄養士の重要性を強く感じましたが、カンボジアにはまだ栄養士が存在しません。
 研修で学んだことは、帰国後すぐに取り込めることと、カンボジアの実状に合わせて工夫が必要なことに整理して今後のプロジェクトに活かしていきたいと思います。

(※1)病院給食ガイドライン・・・患者の性・年(月)齢別、病気の種類や身体の状態などによって、どういった食事(栄養素等量・形態など)を提供するかを判断するための基準。医師はこの基準に基づき、食事の指示書(食事箋)を給食部に発行することになる。
(※2)食品成分表:食品の各栄養価が詳細に記載されている
(※3)食品交換表:食べ物を同じような栄養成分の食品グループに分けて、その中で食品を交換しながら食事・献立の主にエネルギー計算が簡便にできるように作成されている



変化の一方、まだまだ課題も・・・これまでの活動を評価します

(2009年11月18日)
給食支援プロジェクトアドバイザー 草間かおる(管理栄養士)


 9月下旬、2006年に始まったこのプロジェクトの経過をふりかえり、評価をする準備のため、1年ぶりにカンボジア国立小児病院を訪問しました。

 ある日、調理員さんに同行し病棟での配膳状況を視察しました。調理員さんたちを見ていて良かった点は、カットした果物を1人分ずつラップで包むようになったことです。これによりホコリやゴミ、乾燥を避け、衛生的に配膳ができます(写真1)。
 一方問題点も見られました。通常調理員さんは、患者リストに基づき、一人ずつ名前を確認しながら配膳します(写真2)。しかしながら、3日前から入院しているのに患者リストに載っていない患者さんがおり、配膳することができませんでした。この原因が医師の指示(食事を食べてはいけない)なのか、患者リストのミス(アップデートの遅れ)なのかは結局わかりませんでした。


 

(写真1)カットされたドラゴンフルーツ(果物、トレイの左上)がラップで包まれています

 

(写真2)配膳時は、調理員さん(左端)が患者リストで一人ずつ名前をチェック


 評価では、このような問題点のほか、現れてきた効果を明らかにし、今後のプロジェクト運営に役立てたいと考えています。

 「これまでプロジェクトが、患者さんやその家族、給食部メンバー、医師や看護師等の病院職員にどのような影響を及ぼしたか」、「現在の活動で不足していることは何か」などをアンケートやインタビューを通して測ります。調査の計画は、FIDRスタッフ全員で立てました(右の写真、筆者は左手前)。
 11月より調査が始まっています。


プロジェクトの今:給食部の副主任、病院給食を学ぶため来日!

(2009年10月20日)
カンボジア事務所 コンリィ(栄養士)


 給食部の副主任・ソチェト医師が、日本で「栄養士コース」の研修を受けるため来日しました。
 ソチェト医師は、給食プロジェクトが開始されてからずっと病院給食の運営・管理を担い、給食員さんたちに栄養について教えている給食部のリーダーの一人です。

 研修の目的は、病院給食システムの運営・管理などについての知識と技術を高めることで、講義・実習が予定されています。
 
タイの給食システムについて説明する。
ソチェト医師は、国立小児病院スタッフへ、
病院給食のシステムや重要性を伝える
役目も担っています

 研修先は、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院(神奈川県横浜市)で、期間は10月20日から12月中旬の2ヶ月弱。
 今回の研修は、2008年にタイの病院視察に行って以来、ソチェト医師にとって海外で学ぶ2回目の機会。来日前のソチェト医師に、抱負や期待を聞きました。


  ソチェト医師

 研修では、栄養学に加え、患者の病状に合った食事を提供する日本の病院給食システムの運営・管理全般について学ぶ予定です。
 これまでカンボジア国立小児病院の給食を運営する中で、病院給食のシステムと衛生管理を向上させたいと強く感じてきました。

 そのために、一般食に加え特別食を提供するときの手順や、調理員への衛生教育、調理中・保存食材・調理器具などの衛生管理を徹底するための取り組みについて、日本での実践例を理解したいです。
 日本人は優しくて親切なイメージですが、日本は寒いようなので、暑いカンボジアに住む私は緊張しています。言葉の違う国に滞在するので、生活のことは心配していますが、日本のような先進国で研修を受けるこの機会を最大限活かし、新たな知識や技術を蓄えたいです。また、得た見識は、国立小児病院の給食部と病院職員に広め、カンボジアの病院給食を少しでも発展させたいと思います。



国立小児病院給食支援プロジェクトの報告ビデオが完成!

(2009年9月18日)
FIDR東京事務所


 このたび、「国立小児病院給食プロジェクト」の進捗をご報告するDVD・ビデオが完成しました。

 カンボジア初となる本格的な病院給食を導入するこの取組みについて、プロジェクト開始前の状況や給食導入に至るまでの過程をご紹介しています。このホームページ上で現地からの最新情報を届けているカンボジア事務所スタッフのリー・コンリィも登場します。

 既にいくつもの場所で上映していますが、「プロジェクトがわかりやすく説明されている」、「上映時間が短く気軽に観ることができる」等、好評をいただいています。

 貸出も行っておりますので、この機会に、ぜひこのプロジェクトについて映像でご覧ください。
※ 貸出希望の方は、事務局(E-mail:fidr@fidr.or.jp、電話:03-5282-5211)までご連絡ください。
※ DVDのほか、ビデオ(VHS)もご用意しています。

ページトップへ