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カンボジア医療界へ、栄養・食事の大切さを訴えました

(2011年12月15日)
カンボジア事務所  齋藤志野(管理栄養士)

 11月23日、栄養科のイム・クンティアリー看護主任(以下、ティアリー看護師/※)が、カンボジアの看護師・助産師らが集まる研究発表会(National Nursing and Midwifery Conference)で、国立小児病院(NPH)の給食システムについて発表しました。この研究会で「栄養」を主題とした口頭での発表が行われるのは初めて。実は、昨年の研究発表会で、彼女が主催者に、治療における栄養の重要さを提言したことを契機に、栄養が発表主題として認められたのです。

 発表当日。約300人の聴衆を前に緊張の面持ちのティアリー看護師でしたが、「カンボジアでは他に例を見ないNPHの給食システムを他の病院に参考にして欲しい」との強い想いで、NPHの給食システムを堂々と紹介しました。また、看護師・助産師が栄養の側面から患者の治療に携わる重要性や必要性を訴えました。
 聴衆からは、給食の効果や、患者の給食への満足度などについて、いくつも質問が寄せられました。発表終了後、「うまく発表できなかったところもあるけれど、いい経験になった。これから、より良く栄養や給食のことを伝えられるよう頑張りたい」と今後への意欲を見せたティアリー看護師でした。

 全国の看護師・助産師らが集う場でのティアリー看護師の発表は、カンボジアの医療界において大きな意味を持つと考えます。FIDRの給食支援プロジェクトの中で、治療における栄養や食事の重要性を理解し、臨床で実践するティアリー看護師ですが、今後は彼女のような医療従事者がひとりでも増えることが、カンボジアの病院での栄養管理業務の導入につながるからです。今回の発表がひとつのきっかけとなって、カンボジア医療界での栄養への関心が高まることを願ってやみません。

 (※)ティアリー看護師は2008年7月以降給食運営に携わっており、現在では食材の発注、食数管理、栄養科・厨房・各病棟間の連絡調整などの重要な役割を担っています。

緊張しつつも、堂々と発表するティアリー看護師
看護師・助産師にむけて、患者への簡単な栄養カウンセリングについて説明したリーフレット(左写真)
を作成し配布したところ、多くの来場者が手に取っていました



食べる楽しみを届けたい

(2011年10月20日)
カンボジア事務所  齋藤志野(管理栄養士)

「Good morning, スオスダイ(おはよう)!」
「スオスダイ!シノ」

 挨拶を交わしながら、調理員が作業をしている厨房を一周することから、私の一日は始まります。プロジェクトアドバイザーとしてカンボジアに着任して早1か月、1日も欠かすことなく行っている朝の日課です。
 病院給食は、調理員を含む栄養科の職員をはじめ、各病棟の医師、看護師など給食に関わる全ての人のチームワークの上に成り立っています。そして、チームワークの元となるのが、メンバー間の信頼関係。患者さんにおいしく、栄養価の高い給食を提供するためには、「チーム」のメンバーがお互いを信頼し、各々の役割と責任を果たすことがとても大切です。このたび新しく「チーム」に加わった私は、まず、調理員との関係づくりから始めています。

 栄養士として働き始めて約10年。常に忘れずにいたいと思っているのは、「食べること」は人々の生活をより楽しく、より豊かにするために欠かせない大切な営みだということです。「食べること」はより良く生きることです。
 患者の栄養補給というと、点滴やサプリメントに走りがちな傾向がカンボジアの医師たちの間にあるようです。「食べること」の意義を、国立小児病院の関係者をはじめとして、この国の人々に伝えていければと思っています。

 現在、私をはじめ栄養科の職員は、補完食特別食の導入に向けて、調理員たちの研修や、病棟の医師・看護師への説明会、献立作成などで大忙し。補完食提供開始を前に、病棟をまわって赤ちゃんの母乳摂取状況についてお母さんたちへの聞き取りも行っています。

 補完食特別食の導入にあたり、栄養科の職員は、徐々に複雑化する業務に適応することに気を取られがちです。そのような中でも、「私たちは食事と一緒に食べる楽しみも届けているのだ」という思いを彼らと共有しつつ、仕事を進めていきたいと思います。

病室にて、患者のお母さんに聞き取りをする齋藤管理栄養士(右)




「給食部」が「栄養科」になりました

(2011年10月7日)
カンボジア事務所  プロジェクトマネージャー 高橋明美

 7月より、給食部(Meal Unit)の名称が「栄養科(Department of Nutrition)」へと変更され、これまで病院管理部に従属していた部署が、独立した「科」になりました。

 カンボジアの病院で「栄養科」が設置されたのは、初めてのこと。病院給食への取り組みや、臨床栄養を、病院として重んじるようになった結果といえます。

 名称の変更に伴い、これまで「The Kitchen(厨房)」として表示されていた建物の看板を「Department of Nutrition(栄養科)」へ変えました。

 職員たちは「栄養科」という新名称のもとで、意気込みも新たに患者の栄養改善に取り組んでいきたいと語っています。

玄関に掲げられた、「栄養科」の文字



給食部職員が、人材マネジメントを学びました

(2011年8月23日)
カンボジア事務所  プロジェクトファシリテーター ニエン・モリカ

 病院給食運営管理、調理員等の人材管理、厨房の衛生管理、食材・消耗品の在庫管理・・・給食提供のためには、日々の業務のあらゆる側面で、マネジメント(管理)能力が求められます。
 これまでFIDRは、給食部職員が管理能力を高めるために、諸外国の病院での研修や日本人栄養士による直接指導などを実施してきました。今回は、プノンペンの研修機関から講師を招いてのリーダーシップと人材マネジメント研修です。人材の効果的な育成と活用方法を会得するため、給食部主任と、同アシスタント2名が受講しました。

 7月11日から3日間の研修では「良いリーダーとは」「業務の割り当て方」「スタッフのモチベーションをあげる方法」「スタッフを育成する効果的評価法」「コミュニケーション術」といった実践的な内容を、時にはロールプレイを交えて学びました。

 受講したソチェト医師(給食部主任)は、「給食運営には、臨床栄養や病院給食システムの知識を身につけるだけでなく、マネジメント能力を高める必要性がある」と実感。「より効率的に病院給食を運営していくためにも、今回習ったノウハウを全て実践していかなくては!」と意気込んでいます。

 ティアリー看護師(給食部主任アシスタント)は、「調理員などと円滑なコミュニケーションを取るために役立つノウハウを、たくさん得ることができた」と大変満足した様子。「調理員に改善点を注意してもなかなか効果が現れず、フラストレーションがたまることもありましたが、今後は研修で習ったように言い方を工夫します」  

 人材マネジメントに特化した研修を受講したのは初めての給食部職員。翌日から調理員の評価シートを作成したりと、さっそく学んだノウハウを実践しています。


講師(写真左奥)の指導のもと、マネジメントツールの種類を
確認する研修参加者

スタッフの態度を改善するためのコミュニケーションについて、
ロールプレイで実践するソチェト医師(左)とティアリー看護師(右)