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2007年度の給食配膳者数

(2008年4月21日)


 国立小児病院で1日3食の給食の提供が始まってから、1年が経ちました。2007年4月から2008年3月末までに給食を配膳した患者さんの数は、延べ58,891人に達しています。




給食開始後1年を振りかえって

(2008年4月18日)


 カンボジアの国立小児病院で、カンボジアで初となる「1日3食の給食提供」が始まってから、この4月で丸1年が過ぎました。給食提供を支えてきたFIDRスタッフの声を、数回にわたりお届けします。

スタッフの声①~プロジェクト・マネージャー:パン・サン医師

 

 最も印象的なことの一つは、病院で給食運営を担当する給食部メンバーの仕事に対するやる気と向上心です。

 給食の準備は朝五時半から始まるので大変ですが、調理員たちは常に責任感を持って一生懸命に働いています。細かい問題はありますが、調理員たちが「一日も途切れることなく、1日3食を献立に沿って調理し、患者さんに配り続けている」という事実が一番重要。これが、プロジェクトを支える根本だからです。


 また、給食部メンバーは栄養について学ぶ強い意欲をもっています。これは、彼らが栄養・食事・病気の関連性に気付いたからだと思います。特に、医師である給食部の主任・副主任は、栄養と医師としての仕事とのつながりや、その重要性がわかってきたのだと感じます。



タイの病院視察 番外編:近代的な都市にびっくり!

(2008年4月3日)
カンボジア事務所 スルン・ラチャナ


 今回も、2月のタイの病院視察時のエピソードをご紹介します。

 タイ訪問は驚きの連続でした!
 高層ビル、巨大なショッピングセンター、高速道路、そしてスカイトレイン(注:モノレールのような乗り物)。バンコク市内で見る全てのものは近代的で、街は私たちが暮らすカンボジアの首都プノンペンよりずっと大きかったです。
 朝の8時になると国歌が街中に流れます。すると、道を歩いている人は立ち止まり、終わるまで動かないのです。人々の国の対する姿勢が、全くカンボジアと違うと感心しました。
 毎日病院視察に明け暮れた私たちですが、夜の自由時間には買い物に出かけたり、ショッピングセンターで夕飯を食べたりしました。ただ、視察先の病院への道を間違えたり、外出してみたくても、ホテルへ戻れなくなるのが怖くて出かけられないこともありました。
 物価は、あらゆる面でカンボジア国内と比べて高かったです。例えば食べ物。ホテルの朝食(200バーツ=約620円)や夕食がとても高かったので、値段の安い路上屋台で食べたこともありましたが、料理の質と衛生面は良くなかったです。また、お土産を買うにも一苦労。みな、家族や親戚にお土産をたくさん買いたいと思っていたのに、期待通りにはなりませんでした…(私など、用意してきたお金を全部使ってしまったのに!)。

 タイ視察は、病院でも、それ以外の場所でも、発見と驚きに満ちたものとなりました。


スカイトレイン  

視察先の病院からの風景。
街を横断するのは、スカイトレイン

     
集合写真  

「タイの若者の流行の発信地」とも言われる、サイアムスクエアのショッピングモールも訪れました。
右から2番目が、ラチャナ職員



タイの病院給食施設を視察しました

(2008年3月17日)
カンボジア事務所 五十嵐(管理栄養士)


  2月27日(水)~29日(金)まで、給食部主任のカムホイ医師、副主任のソチェト医師、給食員主任のソテアニー看護師、調理員のシナさんとFIDRスタッフが、隣国タイの首都バンコクにあるクイーンシリキット国立小児病院を訪問しました。給食に関連する一連の業務を視察し、現在のカンボジア国立小児病院(NPH)の給食システムを見直し、今後の業務・計画改善の参考とするためです。特に来年度開始予定の特別食について、実際の食事や提供システムを視察し、病院給食の基となる食事摂取基準などの作成方法・過程を知ることに重点を置きました。

 既にカンボジアで病院給食や栄養について学び、給食に携わる給食部メンバーですが、初めて他国の病院訪問では、清潔で効率的な食品の納品方法や、実際の特別食の種別と調理方法など、見るもの、聞くもの全てが新鮮で驚きの連続だったようです。 
 給食部メンバーは、視察中に随所で、NPHと視察先病院との相似点・相違点を比較し、相違点については自主的に自分たちの現状と問題点を振り返っていました。これは、カンボジアでの現状を理解した上で、タイの先進事例を実際に見聞するという貴重な体験をしたからこそ生まれてきた姿勢だと思います。

 今後は、この経験をどのように実務に活かすかを検討し、給食の活動についてNPHスタッフの理解と協力をより得ていくことを目指します。


視察中  

特別食の患者さん用の食札(お盆に載せる札)作成手順について説明を受ける。特に調理員のシナさん(写真右から2番目)は真剣に観察していました

     
視察中

看護助士等病棟スタッフが給食を配膳するなど、給食に関する作業が分担されていました。一方、NPHでは、調理から下膳までほぼ全ての業務を調理員さんが担っています。病棟との協力体制に大きな相違があると感じた一面でした



新器材をご寄贈いただきました!

(2008年3月4日)
カンボジア事務所 パン・サン&国立小児病院 ソチェト医師


 2月11日(月)、京都モーニングロータリークラブ(会長:久保義信氏)の会員10名をお迎えして、同クラブがご寄贈くださった給食棟の調理器材の贈呈式が行なわれました。既に最低限必要な器材は備えていましたが、今回、同クラブには、大量調理を効率的に行なうティルティングパン、調理場の暑さを軽減させることができるクーラー、そして今後導入する特別食作りに活用できるロボクープ・ミキサーの3種をご寄贈いただきました。これらは、より良い給食を提供していく上で大きな助けとなります。

 

京都モーニングロータリークラブの方々とNPH給食部及びFIDRスタッフ

 
 早速、寄贈器材を活用する調理員さんに、喜びの声を聞きました。


ティルティングパン  

「今までは業務用の大きな中華鍋で炒め物をしていたので、かき混ぜたり全体に火が通るまでには時間がかかりました。寄贈を受けたティルティングパン(写真)はカバー付きで底面も広いので火が通りやすく、調理時間が短くてすみます」
(ナパーさん、ポーイさん)

     
スポットクーラー  

「スポットクーラー(写真手前)は、少人数で集まって仕込み作業などを行なうときに活躍しています。涼しくて、作業がしやすくなりました」
(ナパーさん)



2月の患者数

(2008年3月4日)


患者数の推移


プロジェクトの今:「食」への意識の変化

(2008年2月19日)
カンボジア事務所 五十嵐(管理栄養士)


プロジェクトの中でFIDRカンボジア人スタッフと給食部メンバーは、栄養・食事と疾病との関わりについて学んでいます。栄養学が存在しないこの国で初めて学ぶ内容が、まず自分自身の日々の食事を新たな視点で見るきっかけとなっているようです。

 

カムホイ医師「以前は、ご飯とお肉が最も大切だと思っていましたが、今は野菜と果物も健康のために大切だとわかり、家族共々色々な種類の野菜を食べるようにしています。学んだことを娘の家族や患者さんにも広めていきたいし、日々食事を準備する中で、他の人の手本にならなければ、と思うようになりました。」

   

FIDRスタッフ パン・サン「以前はかなりの偏食でした。シーフードを香草と共に食べる料理が好きで、味付けは塩とレモン(塩分多め)。でも、色々な種類の食品を適正量食べるのが大切と知り、偏食を改めました。また、スープの汁を飲む量を減らすなど食塩の摂取量を減らすようにしています。そのお陰か、以前は高めだった血圧も標準の値で安定し、プロジェクトに関わる前と比べて体重が7kgも減り体が健康だと感じるようになりました。」

 

 このような気づきが、プロジェクトや特別食への勉強意欲を一層高めていると感じます。将来的には、国立小児病院の他のスタッフも栄養と健康について理解を深め、患者さんへの栄養啓蒙活動へと発展していくことを目指します。



「雨の日の悩み」が一つ解決!

(2008年2月6日)
カンボジア事務所 パン・サン


 給食棟から外科病棟をつなぐ通路に、念願の屋根がつきました。

調理員さんたちの声から・・・
 「雨季の時期は、配膳時にいつも空を見て、雨の日は雨合羽を着て、配膳車をシートで覆って洗濯ばさみで留めて、積んだトレーや給食が濡れるのを防がなければなりませんでした。でも、屋根ができたおかげで今は大丈夫です。ただ、まだ病棟間の廊下・屋根がない箇所があるので、同じ心配は続きます。いつかそちらにもできるといいと思います。」

 「給食棟から病棟までの通路は凹凸だったので、雨が降るとぬかるんだり水溜りができたりしていました。屋根ができ通路のコンクリートも整備されたので、前よりは快適になりましたが、コンクリートがあまり滑らかとはいえず、まだ少しガタガタしています。」

 「移動中に日差しが当たらないので暑くないし、雨を心配せずに済むようになりました。ただ、通路と病棟とのつなぎ目に段差があるため、重い配膳車を持ち上げなくてはいけないなど、まだたくさんの問題があります。いつか、色々なことが改善しもっと働きやすくなるといいなと思います。」

 喜びの一方で、日々の仕事の中で感じる課題はまだまだ多いようです。
 ※この屋根は国立小児病院により設置されました。


配膳中 水溜り

屋根の付いた通路を通って外科病棟まで昼食を配膳に行く途中です

 

屋根や通路が整備されていない病棟へは、このような排水溝のカバーや水溜りを越えていかなくてはならず、一苦労です



1月の患者数

(2008年2月6日)


患者数の推移


プロジェクトの今:「特別食」開始までのステップ②

 

(2008年1月15日)
 カンボジア事務所 五十嵐(管理栄養士)


 2007年4月以降、国立小児病院(NPH)ではどの患者にも同じ献立の給食を提供できるようになりました。プロジェクトでは来年度、次のステップとして、軟菜食、流動食などを提供したいと考えています。そのためには、何が必要なのでしょうか?

   

給食部メンバー、特に医師である主任と副主任は、各疾病にはどのような食事内容が適当かを学んでいきます。そして、疾病と食事の関係をNPH内の他の医療スタッフに理解してもらう場を設け、働きかけます。

   

患者さんの状態や疾病によって給食の内容を判断するための「院内食事基準」を作ります。医師はこの基準に基づき、食事箋(食事の指示書)を発行することになります。医師は、食事箋を発行できるようになるための勉強を重ねていきます。

   

食事箋によってオーダーされる様々な種類の食事を調理する、多様になる給食を患者さんに間違えずに配膳するなど、調理と配膳には、現在よりもきめ細かな配慮が必要となります。よって、給食部の調理員たちにもさらなる指導を行う必要があります。

   
給食を今以上に「治療の一環」として役立てていくためには、NPHの給食部門、病棟部門のスタッフが、部門の枠を超えて協力していくことが大切です。まずは患者さんの容態に合せて一般食の種類を増やしていきますが、この取り組みが将来の「特別食」の提供につながっていくと思います。

緑豆あんのデザートつきの昼食   患者さんの容態や疾患に即した食事が、子どもたちの元気回復を促進する日がくることを目指して!


プロジェクトの今:「特別食」開始までのステップ①

 

(2008年1月8日)
カンボジア事務所 五十嵐(管理栄養士)


 入院している患者さんの年齢・疾病はさまざまです。今年度は、全ての患者さんへの給食の提供を大前提に活動を進めてきましたが、今後の課題は、患者ごとにもう少し細かな対応をすること。
 一般的に日本では、病院給食が「特別食」と「一般食」に大別され、医師の発行する「食事箋」に基づいて提供されます(図を参照)。



 ※1 
 ※2 

経管栄養の為の濃厚流動食、特別な場合の検査食なども含まれる
極力通常の食事と同様の食材を使い、柔らかさ、食べやすさ、消化のよい食材に配慮して調理した食事


 一方カンボジアでは、病院給食の仕組みがありませんし、医療従事者の間でもまだ「食事も治療の一手段」という考え方があまり浸透していません。国立小児病院でも、給食部のメンバーが病院給食という新しい試みについて少しずつ理解を深め、1日3食を、栄養バランスのとれた一般食として提供できるようになったところです。
 次の目標は特別食の提供ですが、カンボジアの現状を踏まえ、まずは現在の一般食常食に加えて軟菜食を提供できる状況を整えていきます。
 カンボジア人には耳慣れない「食事も治療の一手段」の考え方を、病院スタッフがしっかり理解することが最初のステップかもしれません。


常食 軟菜食

 【現在の給食を軟菜食にすると・・・?】
 ごはん→お粥、肉炒め→卵、みかん→ジュースのように、献立や調理方法が変わります。



12月の患者数

(2008年1月8日)


患者数の推移
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